2003年12月09日

アンダーグラウンド

「ATG(アート・シアター・ギルド)」という映画会社があった。
昭和37年以降、低予算ながらも秀逸な作品をつくり続けてきた会社である。
「1000万円映画」と言われたその作品群は、低予算ならでわの芸術性とパワーをもっている。
今でこそ巨匠と讃えられている名監督の若かりし情熱が、余すところなく表現されている。

有名ドコロと言えば

大林宣彦「転校生」
森田芳光「家族ゲーム」
伊丹十三「お葬式」

ぐらいだろう。これらは比較的万人受けする内容で非常に見易い。

残念ながら大部分のATG作品群はその高い芸術性と、興業収益を無視した内容が多いせいで我々の眼に触れる機会がほとんど無い。
一部のマニアックな劇場の特殊な上映会か、もしくわわずかにビデオ化されたものでしか鑑賞することができないであろう。

好きな作品はいろいろあるのだが、その中でも「田園に死す」という作品がある。
あの伝説のアングラ劇団「天井桟敷」の主催で詩人でもある寺山修二が監督した、彼の実験映画の集大成のような作品である。
不安定な「少年期」の精神世界を、青森県恐山を舞台に監督自身の幼少期を通して描いた幻想的かつ不気味な作品であった。
印象的なシーンをネタバレ御免で少し紹介すると
父親のわからない子供を生んでしまった女性が村人のいじめに合い、仕方なく赤ん坊を川に流してしまうシーンがある。
泣き叫ぶ若き母親。流れていく赤ん坊を川に浸かりながら見送っている。
と、そこへ甲高い民謡のようなBGMと共に、なぜか上流から「ひな壇」が流れてくるのだ。
母親の背後にゆっくりと流れ寄ってくる巨大なひな壇。
アースカラーの田舎の風景に強烈なコントラストを放つひな壇の赤が、見ている者の生理的な部分にまで訴えてくる。
母親の悲しみがこんな形で表現されるとは!と観客は度肝を抜かれるのだ。
寒気がするほどのこの不条理な演出は寺山修二独特のものだろう。
全編通して繰り広げられる不条理ワールドは数あるATG作品の中でも群を抜く出来栄えである。

この「田園に死す」、驚くべきことにDVD化されている。
興味のある方は是非ご覧あれ。
見終わると脳がひきつること必至。。。。。
posted by とと at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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