2004年03月01日

へぶんずすめる

まだおいらがアイデンティティーを確立しきってない頃
当時放送されていたアニメ「天才バカボン」で、あるエピソードに釘付けにされたことがあります。

「主人公であるバカボン少年とその父親が、
手に入れられるすべての材料を利用し「ヘーブー」なる究極の香水を作り出す。」

詳細までは記憶に無いのですが、確かそんな筋だった思います。
で、そのめくるめく魅惑のストーリーに魅了された「幼とと」は、
早速近所のこれまたまだまだ人間としては未完成な友人と共に
究極の香水「へーぶー」を作りだそうとしたわけです。

自宅近くにあった空き家、所謂「秘密基地」にてバカ科学者2名は猛然と開発にとりかかりました。
家で手に入るありとあらゆる食材・調味料・洗剤・燃料・・・・etcを18L缶にぶち込み
さらには木材・セメント・糞尿にいたるまで、その「物質」の構成物として取り込んでいきました。
そこには最早「試行錯誤」という言葉は無く、
ひたすら「混ぜる」という作業に徹するシンプルでピュアな工程のみが存在していました。
材料が一つ増えるごとに溶液の色が変化していきます。
その色といったら未だに何色なのか言い表せない不思議なものでした。
そしてある一定の濃度限界を超えた時、それは異様な刺激臭を伴いまさに「覚醒」したのでした。

数日間暗所にて放置した後、
二人は溶媒の沈殿を終えた「ヘーブー(幼体)」のその透き通った上澄みを丁寧に掬い取る作業に。
そして当時一般家庭に必ずあった「霧吹きスプレー」に注ぎ込まれ、
ついに究極の香水は完成を迎えたのです。
二人は声をあげて完成を讃えあいました。確かがっちりと握手とかしてたと思います。
幼い挑戦者の渾身の力作、そして野望を含んだ英知の結晶、その名も

「ヘーブー NO・5」

それは別に5番目にできたからということでなくて、
どこかで「シャネルの5番」という名前を聞きかじっていたことから
「NO・5」というのが香水としての称号だと思っていたからに他なりません。
シャネルと同レベルなわけです、シャネルと。
二人は学校でもらったフェルトペンで、大きくその名を霧吹きに書きこみました。

祝完成の喜びで小躍りした二人は早速その効果を試すことに。
お互い試験結果の成功を誓い合い自宅へと向かったのでした。

とと宅ではその日の夕食の食材を購入に行かんとしていた母親が、
鏡台の前で念入りな化粧に余念なく集中しておりました。
おいらにとって絶好の実験対象でした。
化粧と香水というイメージの結合がおいらの衝動を加速させてしまいました。
おもむろに霧吹きを握りしめ母親の背後に忍び寄るおいら。
そして当時まだ女性としての輝きを誇示していただろうその襟足にむかって、
幼い科学者のその「猛り」は噴出されたのでありました。

おいらは後にも先にも、そのとき聞いた絶叫以上の人間の声を聞いたことがありません。
そして香水というよりも劇薬に近い「ヘーブーNO・5」の破壊力抜群な激臭に自らも意識を混濁させられていく中、
母親の「指輪付きグーパンチ」が振り向きざまにおいらの左テンプルを強襲した衝撃を、
生涯忘れることはないでしょう。
後で聞いたのですが、
その時母親は「ヘーブー」に神経系統を攻撃され瞬間的に五感のコントロールができなくなったそうです。
つまり、その母親の反撃は深層の防衛本能が繰り出した「残留思念パンチ」ということなのでしょう。
完成検査は最高の結果で幕を閉じたのでした。

翌日、左目周辺に青アザをつくったおいらは、盟友の検査報告を楽しみしながら登校しました。
が、彼の姿は朝の教室のどこにも無く、その日とうとう終日姿を見ることはなかったのでした。

同胞の殉職に自らが達成した偉業の壮大さを改めて実感したおいらは、
ランドセルに忍ばせていたその「偉業」を、静かに盟友の机に置いておいたのでした。
「ヘーブーNO・5」・・・それは甘酸っぱい幼少の思い出。



なむなむ ちーん。
posted by とと at 11:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 思ひ出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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